![チェ ダブルパック (「28歳の革命」&「39歳別れの手紙」) [DVD]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51WU3mFaHrL._SL160_.jpg)
昨年話題になった作品。映画を見に行く機会がなく、DVDも購入したものの数ヶ月放置していた状態でした。内容はタイトル通りチェ・ゲバラに関するもの。第一部はメキシコからキューバーを救う為に一革命兵士(正確には医者ですが)として渡航し、次第に革命家としての頭角を現しながら、キューバ革命を成功させる話。第二部はキューバ革命後、単身ボリビアに潜入し、ボリビアでも革命を起こそうとするも上手く行かず、最後処刑されてしまう話。要するに革命家「チェ・ゲバラ」の栄光と挫折を描いた作品です。
とは言っても、良くあるハリウッド映画のようなドラマティックな演出や脚色は一切なし。ひたすら時系列に合わせて淡々と進行します。よけいな演出をせず、事実を淡々と描くことで革命家「チェ・ゲバラ」を客観的に、冷静に捉えてみたと言うことでしょうか。
その狙いは悪くないし、現に「トラフィック」では同様の手法でアメリカの麻薬問題を見事に描いていて、漠然としたものではあったけどアメリカの麻薬問題の深刻さがジワジワと伝わってきました。
しかし、少なくとも私には本作品から何も伝わってきません。淡々とチェを描くその底流に、監督は何をメッセージとして埋め込んだのか。ヒーロー視されることの多いチェが、そんなにドラマティックなヒーローではなく、失敗を重ねながらただ真摯に朴訥に人々を愛し、信念を貫き通した人物であると言うことを伝えたかったのか、英雄たるチェでさえも人の心を掴むことは難しいし、掴めなければ負けると言うことを伝えたかったのか。それとも、何も伝えないことで、観客それぞれに「チェ・ゲバラ」という人物を考えてもらいたいのか。それともそれ以外?
映像は特に第二部に関しては素晴らしいクオリティだったし、デル・トロの演技も素晴らしかったと思います。でもそれだけ。何も胸に刺さるものがない。結局、ソダーバーグが7年かけて掴んだ「チェ・ゲバラ」って何なの?今、「チェ・ゲバラ」を映像化する意味って何なの?と疑問ばかりが残った感じ。
もしかすると、自分自身がキューバ革命やあの頃のラテンアメリカの実情、そもそも「チェ・ゲバラ」について、あまりにも無知故にストーリーが追えないことがこの感想につながっているのかもしれません。でも、同じような知識量でも「トラフィック」は十分に伝わってきたし、同じ「チェ・ゲバラ」を扱った「モーターサイクルダイヤリーズ」も十分に伝わるものがありました。
優れたものがあっただけに、何も伝わってこなかったのが非常に残念。ただ、この作品がきっかけで当時のラテンアメリカや「チェ・ゲバラ」のことを少し勉強してみようと言う気になったので、自分にとって少しは価値のある作品だったと思います。
って、ソダーバーグ監督の狙いはそこだったりして?(笑)