
1996年にマツダがフォードのグループ企業になってから、RX-8やアテンザなどで2003年に復活を遂げるまでを描いた本。前半はRX-8の開発を主軸にしたエンジニア視点での復活劇を描き、後半は少し客観的に経営視点からの復活劇を描いています。
前半はプロジェクトX的な面白さでぐいぐい引き付けられ、非常にストイックな意味でのプロダクトアウト、ただ技術者が思いつくままに作り上げたという意味ではなく、経営層からの無理難題を叶えつつ、理想の車作りを目指したマツダエンジニアの凄さを感じました。
後半は、財務面の改善〜コアコンピタンスの模索〜確立という再建のステップがフォードから送り込まれた経営陣によってどう成し遂げられてかが良くわかります。同時期に同じような復活を遂げた日産のゴーンによるドラマティックな改革と比べると、地味でわかりにくい。当時マツダユーザーだった自分から見て、社長はころころ変わるし、メーカーとしての戦略もよくわからないし、本当にこの会社大丈夫なのかと思っていたわけですが、中では着実に復活への道を歩んでいたことが理解できました。
全体としてクールなビジネス本でもないし、ファンや中の人がただ熱く語っただけの本でもなく、一歩下がったところから少し冷静に、でも思い入れたっぷりに書かれているのが読んでいて好感が持てる点でした。
本書を読んで、プロダクトアウトという言葉の再確認が出来ました。ただ「自分たちが使いたいものを作る」という部分は良く言われるし、これすらも出来ていないことが多い(思いつきで作っただけのものをプロダクトアウトという人も多い)のですが、そこに経営層の要求も取り入れた上での「プロダクトアウト」。マツダはそこまで追い詰められていたわけですが、それこそが本来あるべき「プロダクトアウト」の姿じゃないかなと思いました。
あと、内容に対しての疑問としてはその復活の道筋。復活のステップを3段階として、それぞれに適切な社長を送り込んだ形になっているけど、果たして当時のフォードはそれを計画的に実行していたのか、成功したから言える結果オーライなものではなかったのかという疑問が残ります。そして、結果オーライとしても復活を遂げたマツダの今はどうなのかなと。
ロードスター以来のプチマツダファンである自分としては、「本田宗一郎やカルロスゴーンのようなカリスマ的存在はいないけど、松田だってすごいんだぜ」とファンとして誇りたくなる読了感を得た本でした。